天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

感情を詠むー「怒り」(5/6)

  終局はおのれに還る怒りもて弧を描きくる黄のブーメラン
                      渡辺茂子
*他人への怒りが、やがて自分自身への怒りとなって還ってくることは、
 よく経験する。

 

  そうだそのように怒りて上げてみよ見てみたかった象の足裏
                      渡辺松男
  暴言に怒らずと言ふか然(さ)にあらず怒りが湧く二日ほどのち
                     さいかち真
*暴言を聞いてすぐに怒りを覚える人と、数日たってから怒りが湧いてくる
 人とあるようだ。

 

  怒りいま肩より腰に滑り落ち仁王立ちとは淋しきかたち
                      飯沼鮎子
*仁王立ちの比喩として面白い。

 

  秋の夜を大女(おおおんな)となり怒りおり重たき足に月光を踏み
                     梅内美華子
  かの日吾を打ちし教師の沸騰を鍋見るごとくわれは見てゐつ
                      真中朋久
  「猫投げるくらいがなによ本気だして怒りゃハミガキしぼりきるわよ」
                      穂村 弘
*若い男女の口論の様子がまことに愉快。上句と下句の取合せに笑ってしまう。

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ブーメラン (webから)