天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

荒天を詠むー嵐(4/6)

  大井川にごらぬ水にかげ見えて咲くやあらしの山ざくらばな
                      加藤千蔭
*加藤千蔭は、江戸時代中期から後期にかけての国学者歌人・書家。
 千蔭の歌風は『古今和歌集』前後の時期の和歌を理想とする高調典雅な
 ものとされる(『ウィキペディアWikipedia)』による)。

 

  秋の色のながめにかへてこの頃は高嶺のあらし麓のしぐれ
                      戸田茂睡
*戸田茂睡は、江戸中期の国学者歌人。古今伝授など秘伝の多い中世歌学を
 批判,歌語の自由を主張。和歌革新の先駆者の一人(百科事典マイペディアから)。

 

  はやて風枝ながら揺る柿の実のつぶらつぶらにいまだ青けれ
                      島木赤彦
  あかときの暴風雨のなかに目をさめて吾が児の寝顔目守(まも)りけるかも
                      古泉千樫
  かうかうと真夜を吹きぬく嵐の中血を喀(は)くきざしに心は苦しむ
                      松倉米吉
*松倉米吉: 明治-大正時代の歌人。古泉千樫に師事し「アララギ」に入会。
 労働者の生活体験をうたい貧窮のなか,病死。享年25歳。

 

  月の光やや遠くまで明るきを吹きてすぎゆく春のあらしは
                     佐藤佐太郎
  風邪の熱たかまれる子と室(へや)ごもる春の嵐はひと日やまずも
                    久保田不二子

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大井川