荒天を詠むー野分(2/2)
おもと人半蔀(はじとみ)おろす袖口のあらはなるまでふく野分かな
井上文雄
*おもと人: 貴人のそば近くに仕える人。侍従。侍女。女房。
半蔀: 上半分を外側へ吊 り上げるようにし、下半分をはめ込みとした
蔀戸 (しとみど) 。
わが庭に野分のかぜの吹く見れば靡かふ羊歯(しだ)の向(むき)さだまらず
斎藤茂吉
雨の洩るうれひは無くてこの夜半の野分の雨をひとり聴きをり
三ケ島葭子
*現在住んでいる家では、雨漏りの心配はないという。
葱畑に葱の碧鉾(あをぼこ)みな折れし野分すぎたる磯山のうへ
結城哀草果
この吹き方野分にしてはなまやさしされどもひれふす鶏頭の花は
川田 順
端然とたたみに坐る今朝とみに四方さむざむと野分立つゆゑ
前川佐美雄
*上句と下句は転置の関係。