天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

窓を詠む(3/5)

  劇薬をはかりし秤(はかり)と硝子器と華麗なり八月の窓に見しもの
                       真鍋美恵子
*劇薬: 激しい薬理作用,体内蓄積作用がある医薬品で,薬事法の規定に
 基づき厚生大臣が劇薬に指定したもの。毒薬よりも弱い。〈劇〉の字と品名
 を白地に赤わく・赤字で表示し,他の医薬品と区別して貯蔵しなければ
 ならない。(百科事典マイペディアによる)

 

  紫陽花のむらがる窓に重なりて大き地球儀の球は冷えゐつ
                        葛原妙子
*窓を境に、室外の紫陽花の群と室内の大きな地球儀とが接している情景。

 

  くれなゐにネオン顕ちくる夕まぐれひと日の窓を鉄もて鎖す
                        千代国一
*下句は、一日を過ごした部屋の窓を閉めて鍵をかけた、ということの
 ようだが、結句がなんとも重苦しい。

 

  夜にひらく窓より霧は流れ入り長き不在を截る紙ナイフ
                        川口常孝
*夜に帰ってきて部屋の窓を開いたら霧が流れ入ってきた。長らく部屋を
 留守にしていたので、郵便物などが溜っていた。それらを紙ナイフで
 截って開けたのだ。

 

  陸橋にとなれる窓に顔出でて坂のぼり来しわれを迎ふる
                        玉城 徹
  かがやける藤の青葉の一揺れや音やはらかく窓やはらかく
                        中村純一
  わが眠りひと夜守りゐしガラス窓明方にびつしり汗を噴きゐる
                       五喜田正巳
*明け方のガラス窓を擬人法で詠んだ。ガラス窓が作者の一夜の眠りを、
 びっしり汗をかきながら守ってくれた、という。

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地球儀