天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

はかなし(5/6)

  潮(しほ)沫(なわ)のはかなくあらばもろ共にいづべの方にほろびてゆかむ
                          斎藤茂吉
  米櫃に米のかすかに音するは白玉のごとはかなかりけり
                          北原白秋
  うつし身は果(はか)無(な)きものか横向きになりて寝ぬらく今日のうれしさ
                          古泉千樫
  うつし世ははかなきものをおのづからよく楽しみて遊びけるかも
                          古泉千樫
  うつし世のはかなしごとにほれぼれと遊びしことも過ぎにけらしも
                          古泉千樫
*うつし: 「うつつ」と同語源。
     ➀ 現実にこの世に生きている。➁ 正気である。気が確かである。

 

  ゆく秋のわが身せつなく儚くて樹に登りゆさゆさ紅葉(こうえふ)散らす
                         前川佐美雄
  あわただしく過ぎつつ楽しあかつきを覚(さ)めてはかなきことありぬとも
                          柴生田稔
*下句(明方目覚めて、はかないことがあったとしても)の具体が不明。
 あわただしく一日が過ぎてゆくのが楽しい、という。

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米櫃