千鳥のうた(2/6)
百千鳥には、次の三つの場合があるので注意を要する。(大辞林 第三版の解説
から引く。)
① 多くの小鳥。いろいろの鳥。また、春の山野に小鳥が群がりさえずるさまや
その鳴き声をいう。古今伝授の三鳥の一。 「 ―さへづる春は/古今 春上」
② チドリの別名。 「友をなみ川瀬にのみぞ立ちゐける―とは誰かいひけむ/
和泉式部集」
③ ウグイスの別名。 「 ―こづたふ竹のよの程も/拾遺愚草」
しほの山さしでの磯にすむ千鳥君が御代をばやちよとぞ鳴く
古今集・読人しらず
*「さしでの磯」は、山梨県山梨市の中心部、笛吹川沿い位置する景勝地、歌枕。
思ひかね妹(いも)がりゆけば冬の夜の川風寒み千鳥鳴くなり
拾遺集・紀 貫之
*「恋しい思いに耐え兼ねて愛する人のもとへ出かけて行くと、冬の夜の風は寒い
ので千鳥が鳴く、その声が聞こえる。」
夕されば佐保の河原の河霧に友まどはせる千鳥鳴くなり
拾遺集・紀 友則
*「友まどはせる」は、友とはぐれてしまった、と解釈しておけばよい。
友を無み川瀬にのみぞ立ちゐける百千鳥とはたれかいひけん
和泉式部集
明けぬなり加茂の河瀬に千鳥なく今日もはかなく暮れむとすらむ
後拾遺集・円松
佐保川の霧のあなたに鳴く千鳥声はへだてぬ物にぞありける
後拾遺集・藤原頼宗
淡路島かよふ千鳥のなく声にいくよねざめぬ須磨のせきもり
金葉集・源兼昌
*百人一首で知られる。「淡路島から渡ってくる千鳥の鳴き声に、幾夜目を覚
まさせられたことだろうか、須磨の関守は。」