千鳥のうた(5/6)
沖つ風雲居に吹きて有明の月にみだるるむら千鳥かな
村田春海
*雲居: 雲のある場所。雲のたなびいている所。大空。
千鳥なく相模の冬の荒き波あらかろがろし一人来ましぬ
川田 順
まひわたる千鳥が群は浪のうへに低くつづきて夕日さしをり
若山牧水
とらへがたく微けきひかり千鳥ゐて冷砂のあひに抱卵のさま
葛原妙子
帰依不帰依いずれ空しく川床に遊ぶ千鳥の二羽又三羽
石田比呂志
*帰依: 神仏や高僧などのすぐれた者を信じ、それによりすがること
(大辞林 第三版)。
島の渚に日は照らせれど消しがたき影ひとつ持ちて遊ぶ千鳥は
安田章生
かぎりなくさびしきことの一つにて雄(お)の千鳥雌(め)の千鳥に添えり
川口常孝
笛のごと夕べ啼きあふ小千鳥の黒点点と中州をはしる
浜口美知子
*小千鳥: 全長16センチメートル 内外で、日本産のチドリ類では最小。
ユーラシアに広く分布。日本ではおもに夏鳥として渡来して海岸・河原など
の砂礫されき地に営巣する。(大辞林 第三版から)
弘法麦かすかに揺るる静けさに白千鳥ひとつ鳴きて夕づく
南 丘華
*白千鳥: 全長約18センチメートル。背面は灰褐色、腹面は白く、胸に前で
切れている黒帯がある。(大辞林 第三版から)