天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

千鳥のうた(6/6)

 俳句では、千鳥は冬の季語。

     星崎の闇を見よとや啼(なく)千鳥        芭蕉
*星崎は名古屋市南区にある千鳥の名所で歌枕。星と闇との取合せ。
 この句を記念した千鳥塚が名古屋市緑区鳴海町・千句塚公園にある。
 文字は芭蕉の筆、これは芭蕉存命中に建てられた唯一の翁塚であり、俳文学
 史上稀有の遺跡という。

 

     一疋のはね馬もなし川千鳥        芭蕉
     千鳥立(たち)更(ふけ)行(ゆく)初夜(しよや)の日枝(ひえ)おろし
                         芭蕉
*比叡颪(日枝おろし)の寒風の中、千鳥の群が鳴きながら飛んでいく。戌の刻
 (現在の午後8時ごろ)のこと。

 

     上汐の千住を越ゆる千鳥かな      正岡子規
     浦富士は夜天に見えて鳴く千鳥     鈴木花蓑
     吹かれよりて千鳥の足のそろひけり   渡辺水巴
     裏となり表となりて千鳥飛ぶ     五十嵐播水
     鳴く千鳥水さえざえと暮れのこる    瀧 春一
     千鳥の声鈴振るやうに子のマラソン  加藤知世子
     啼く千鳥攫ひて風の荒ぶなり     上田千枝子
     追ふ千鳥追はるる千鳥こゑもなく    行方克巳
     さざ波にさざれ石あり浜千鳥     松本たかし

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千鳥塚 (webから)