天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

小池光の短歌―ユーモア(1/26)

 先日ご紹介したように小池光さんの第十歌集『梨の花』が出版されたが、これを読んでも小池光短歌の最大の特徴は、ユーモアにあると痛感した。あらためて第一歌集から第十歌集について、ユーモアの面から読み直してみた。このシリーズでは、小池短歌のユーモアの源泉をまとめてみたい。ちなみにユーモアが目立ってくるのは、第三歌集『日々の思い出』からである。
 辞書によるとユーモアとは、思わず微笑させるような、上品で機知に富んだしゃれ。人間の行動その他の現実の事象に対してそれをおかしみの面からとらえ、表現しようとする精神態度、ないしはそこに表現された滑稽さそのものをさす。
 ユーモアの感情を表現するには、品詞の使い方に工夫が必要である。本シリーズでは、次のような観点から分類し、それぞれに例歌をあげることにした。一首に複数の工夫がなされていることも多々ある。作品は発行された歌集順に並べた。

( 1)副詞(句): 副詞は、おもに動詞,形容詞,副詞を修飾して,それらの
    意味に様態や程度などのうえでの制限を加える働きをもつ。 自立語で
    活用がなく、主語にならない語のうちで、主として、それだけで下に来る
    用言を修飾する。〈はっきり〉など事物の情態を表し動詞を修飾する情態
    副詞,〈ちょっと〉など事物の性質・情態の程度を表し形容詞・形容動詞
    を修飾する程度副詞,〈決して〉など述語の陳述にかかる陳述副詞に3分
    される。
( 2)助詞・助動詞 : 助詞は、付属語のうち、活用のないもの。常に、自立語
    または自立語に付属語の付いたものに付属し、その語句と他の語句との
    関係を示したり、陳述に一定の意味を加えたりする。
    助動詞は、付属語のうち、活用のあるもの。用言や他の助動詞について
    叙述を助けたり、体言、その他の語について叙述の意味を加えたりする働き
    をする。意味によって,受身・可能・自発・尊敬(れる・られる),使役
    (せる・させる),丁寧(です・ます),打消し(ない・ぬ),過去(た),
    推量(う・よう),推定(らしい),希望(たい),指定(だ),比況
    (ようだ),様態・伝聞(そうだ)などに分けられる。
( 3)オノマトペ : 擬音語、擬声語、擬態語。品詞としては、副詞(句)。 
( 4)リフレイン(念押し、冗語)  
( 5)とり合わせ(飛躍、強引、似通った押韻の異なる言葉の取り合わせ、雅と俗)
( 6)「われ」の描写(見立て・客観ねじれ・客観視)
( 7)主体のとり方(体の部分、人間以外)
( 8)把握・認識の仕方
( 9)当たり前のことを正確にあらためて詠む
(10)過剰に丁寧・厳かな言い方、哲学的もの言い、言葉の珍しい組み合わせ、造語
(11)擬人法: 強調したり親近感・滑稽(こっけい)感を出したりする目的で、
    人間以外のものを人間めかして大げさに表現する技法。
(12)比喩: なぞらえ,見立て,喩えを用いる言語表現の総称。
(13)表記(通常と違うもの、謎解き効果)
(14)漢字の読み方を変える
(15)漢字の成り立ちからの発想
(16)話言葉、卑俗な言葉
(17)結句に古語を使用
(18)同音異語(同音の別文字に転化)
(19)似通った押韻の異なる言葉の取り合わせ
(20)[動詞+こと]で名詞句+を+し+て
(21)掛詞: 二つ以上の意味が含まれている言葉。

 なお、このシリーズで載せた参考画像は、webから借用したもの。

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小池光さん 仙台文学館