小池光の短歌―ユーモア(3/26)
◆副詞(句)2/4
*オノマトペも副詞(句)でユーモアの源泉のひとつだが、別項でとりあげる。
齧歯類さながらこの子金太郎飴を折り食ふぱきんぱきんと
『草の庭』
ブランコの垂れたるしたにみづたまりかならず置きて雨はれにけり
煙突であらざるべからざる物象はけむりをあげてそこに在るなり
どろの舟ちんぼつといふありさまに夕食はてて眠りしきのふ
川しもに傾きふかく杭はたつ降りくる脚をせつにもとめて
欄干にひとつ立つたる空きカンにおのづとすでにわが足の寄る
ウォークラリー「武蔵野十里」は出発すひたぶるに動く足を集めて
街頭に饅頭買へばたちどころに北京晩報破りて包む
岩稜にかすかに生(は)える青草を略奪すればひとたび芳(かを)る
朝々にハマヒサカキの葉をみればとりとめもなく嫩(わか)葉(ば)の萌ゆる
数十羽しづかにゐたる鴉らはむろん雑談をすることもなし
階段をのぼり来たれる足音が扉(とびら)のそとにはたして止まる
かいらんばんことりと落ちし音きこゆ かたみに知らぬ誰か入れたり
『静物』
ボルツマン定数kはいのちありさなきだに風邪、宇宙をわたる
大雪の降るべき明日はかならずや電車とまれと生徒らねがふ
その鞄われに持たれてとしふりぬ遠くの虹を見たりなどして
[注]上の歌に続く作品が、同じ歌集にある場合は、歌集名を省略してある。
つまり歌集名のない歌は、その上の歌集名に同じということ。