小池光の短歌―ユーモア(24/26)
◆漢字の読み方を変える
*読者におどろきを与え、納得させて笑わせる。
日の恋しき頃となりつつおほははが赤(あか)毛布(げつと)と言ひし赤毛布かな
『日々の思い出』
ハチマキにエンピツ挿しし知(とも)晴(はる)が牛(ぎう)となりをりここの牛舎に
『草の庭』
朝礼に迷ひこみ来し小犬(しようけん)に女子整列のしばし乱るる
つんつんと黒松苗木ゆれゆれつせまる雨脚(うきやく)におどろきながら
『静物』
だぶだぶの純綿脚絆のりづけて階段くだるきやきやとか叫(おら)び
大きさをはつか違へる左右(さう)の足 体重計にわが立てばみゆ
『山鳩集』
顔面に毛の無いことをあかしとし猿中(ゑんちゆう)の猿に雪舞ひくるか
『思川の岸辺』
焼とん屋に「こめかみ」といふメニューありしばしおもへる豚の顳(こめかみ)
『梨の花』
◆漢字の成り立ちからの発想
*読者におどろきを与え、納得させて笑わせる。
女の眉が媚(こび)にて女の鼻が嬶(かかあ) 女の口はわらへる如し
『滴滴集』