天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

身体の部分を詠むー眉(2/2)

 眉の熟語は、眉宇・眉目/蛾眉(がび)・愁眉・焦眉・拝眉・白眉・柳眉、眉間(みけん)、眉毛・眉根、眉目(みめ) などと大変多い。
 平安時代以後は貴族の婦人は眉毛を抜き,額に墨で太い眉を描いた。民間では貞潔のしるしに既婚婦人が眉をそり落とす風があった(百科事典による)。

  物の影おぼろの闇を歩みきて清かりしかの眉ぞ目に顕つ
                      岡野弘彦
  眉けむる秋の夕べの反(かえ)り陽に人ゆきて小さきことばとどまる
                     馬場あき子
  その眉に何思ひゐむいつまでも蜜柑の白きすぢとれる子は
                     佐佐木由幾
*子供が何を思っているのだろうと顔をみつめるとき、額から眉のあたりに焦点があたる。

  眉落ちし妻にふたたび柔かく生(うぶ)毛(げ)生ひきてやさし立ち居の
                      伊藤 保
*眉の落ちた妻とは、癌治療中なのだろうか?

  水よりもはかなきものに眉目なき顔おもひ出づ天使のすがた
                      佐竹彌生
  眠りゐる眉をやさしと思ひ見つ小さき命を内にはぐくむ
                      長尾福子
*妊娠した娘の寝顔を見ている母の姿を想う。

  われつひに眉長き相となりなむを思ひて眉を切りゐたりけり
                      清水房雄
*「眉長き相」とは、老人の相貌を意味する。

  むらさきの山独活たべて早春の眉毛かゆがる姉妹の少女
                     小島ゆかり

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山独活 (webから)