身体の部分を詠むー髪(8/13)
涙拭(ぬぐ)ひて逆襲し来る敵兵は髪長き広西学生軍なりき
渡辺直己
*渡辺直己の代表作で有名。
吾がまなこ疑ひつつも一すぢの白きをぞ見る君が髪のなかに
川田 順
*まだ若い奥さんの髪に、一本の白髪を見つけた時の驚きを詠んだ。少し大げさのようだが。
ひさしくて見ればかかげし妹(こ)の髪のやや解け垂りて憎からなくに
中村憲吉
父とともに生きて在る日よ朝光(あさかげ)の床屋にならびて髪を刈らるる
窪田章一郎
髪きつく毮るばかりにさみしくてわれの青銅時代はながし
春日井 建
*青銅時代とは、どの時期を指すのか不明。
一隊をみおろす 夜の構内に三000の髪戦ぎてやまぬ
福島泰樹
*学生運動華やかなりし頃の情景だろう。
ゆらゆらと陽に漂へる人参の尾の如き子の下げ髪かなし
中城ふみ子
*子の下げ髪を「陽に漂へる人参の尾」と直喩したところが珍しい。