身体の部分を詠むー髪(11/13)
夢なにか見たりしあさの頭髪を掌に束ぬれば汚れて重し
阿木津 英
黒髪に少しまじりて白髪のなびくが上に永久のしづまり
土屋文明
白髪のフライドチキンのをぢさんに「米帝かへれ!」と叫ぶ如月
仙波龍英
ぬれそぼりしわが蓬髪を吹き上ぐる風のなかにて薄き虹たつ
石川一成
天涯のくらみの風にあふらする髪おおかたは棒立ちにけり
西潟弘子
月天心いづこか君がざんばらの髪を湯にとく湯はわが潮(うしほ)
坂井修一
洗いたる髪は枕に冷えながら階上階下の間に眠る
五所美子
阿木津英、仙波龍英、石川一成、西潟弘子らの作品以外は、いずれも難解。土屋文明の「永久のしづまり」とは。坂井修一の結句は、常に自分はあなたのそばにいる、という愛情を言いたいのだろう。五所美子の下句はいかなる場所を指すのか。中二階?