天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

身体の部分を詠むー髪(13/13)

  シニヨンの髪をほどきてしまらくは死者を思わむ揺り椅子に揺れ
                       道浦母都子
シニヨンとは、束ねた髪をサイドや後頭部でまとめた髪型のこと。ファッション性より動きやすさを重視した髪型として認知されている。

  くらやみに髪をあみつつ手に触れしなにものの尾か編みこみにけり
                        小林幸子
*下句の内容が不気味。

  夜のすべてに封印をするしぐさにて髪たばねるを眺めつつあり
                        荻原裕幸
*上句は作者の感性からくる。

  歌語事典「野」の頁よりわがものとおぼしき髪の一本は出づ
                       森岡千賀子
  額縁の髪抜けたればわが顔に猛禽類の潜みゐしかも
                        原谷洋美
*下句の暗喩が不可解。

  ものを書く時に髪は邪魔なりし侍のごと結びて字を書く
                        前田康子
  掻い撫でて諸手に余ると嘆きしはいつの逢瀬のわが髪なりし
                       井関古都路
*現在のふたりの関係が思われる。お互いに老いたのだろう。

  玉手箱開けばたちまちぬばたまの黒髪となるとふ逆説なきや
                        阿部和子
*順説はもちろん、「玉手箱開けばたちまち白髪となる」という浦島太郎の話。

f:id:amanokakeru:20200205073032j:plain

シニヨン