身体の部分を詠むー首(1/3)
首は、頭と胴をつなぐ部分。「く(凹)」を語根とする。
わが恋は千引(ちびき)の石(いは)を七ばかり首にかけむも神のまにまに
万葉集・大伴家持
*「私の恋は、千人引きの岩をも七つばかり首にかけてもよいと思うほどであり、神さまの思し召しのままにしたい。」という。大伴坂上大嬢へ贈った恋歌の一首。
ひた赤し落ちて行く日はひた赤し代掻馬は首ふりすすむ
結城哀草果
*代掻馬: 田植の準備として田をならす仕事をする馬。
寂しければ首さしのべてわれの見る火山の島は濡れてゐにけり
福田栄一
首のなきらかんを見れば首のあるらかん共こそあはれなりける
斎藤 史
積みてある貨車の中より馬の首しづかに垂れぬ夕べの道は
玉城 徹
炎天下土工に出でてゆく彼のまざまざとして百姓の頸
石川不二子
硝子なき冬の教室幼ならは素首(そくび)寒らに音読してあり
木俣 修
*「硝子なき冬の教室」の具体が不明だが、校庭に面している窓にも硝子がなく、ふきっ晒しなのだろうか。