天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

身体の部分を詠むー足(3/8)

  あかときに吾を踏みつけて厠にゆく信三の足の大きくなりぬ
                     五味保義
*五味保義は、長野県下諏訪町出身の歌人、万葉学者であった。齋藤茂吉、土屋文明の指導を受けながら歌誌「アララギ」の発行に携わり、戦後は、世田谷区奥沢の自宅を「アララギ」発行所とした。

  このやうな力入らざる足をしてこのはげしき世に生きゆくものか
                     五味保義
  すこやかな人の歩みは早くして左脚も右脚もすなほにうごく
                     五味保義
  あしびきの山の夕映えわれにただ一つ群肝(むらぎも)一対の足
                    佐佐木幸綱
  デイトリッヒの脚モンローのひつぷなどはわが形而上のよろこびなりき
                     野村 清
マレーネ・ディートリヒマリリン・モンローいずれも個性的かつ退廃的な美貌の持ち主で、脚線美とセクシーが売り物であった。下句によればこれが作者にとっては、理屈を超えた喜びであった、という。

  水上スキーのあかがねの脚はるかなる沖ゆく牡は牡みごもれよ
                     塚本邦雄
*「牡は牡みごもれよ」の意味・位置づけが困難。この一首だけではなんとも解釈不能な不可解な作品。

  重ねたる足首に太き釘を打つキリストの像を暗がりに仰ぐ
                     奥村晃作

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キリストの像