天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

身体の部分を詠むー足(4/8)

  冷えゆるむたたみを踏みてゆく素足いづこか春の清水湧く音
                    山本かね子
  美しき脚美しき花の色ひとときともに息す車内に
                     小野茂
*美しき花は美しき脚の人が抱え持っているのだろう。

  沓ぬぎし素足にはかに跳べさうなわれはもともと奔馬なりしか
                     大塚陽子
  速度感にほふが如しガラス戸を隔てて女の脚の流れは
                   井谷まさみち
  乳(ち)のごとくかがやく四肢を横たふる夜明けの雷にそをたとふべき
                    山田富士郎
*四肢とは人間の場合には両手と両足を指す。「そをたとふべき」の「そ」とは何を指すか? 夜明けの雷に譬える対象は何か? 一首の中では、「乳(ち)のごとくかがやく四肢」しか見当たらない。

  あおむきに洗われている母の四肢かの始祖鳥の絵図のごとしも
                     池本一郎
*始祖鳥: ドイツ南部のジュラ紀石灰岩から発見された爬虫類と鳥類の中間の生物。無残な描写である。

  裏向きの靴ひとつある戸口まで片足とびに行く左脚
                     小畑庸子
*右足用の靴が戸口に裏返って置かれているようだ。靴を履いた左脚のケンケンで戸口まで行くのだ。

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始祖鳥 (WEBから)