天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

身体の部分を詠むー足(6/8)

  麻痺のなき片足に波蹴りつづけ物言わぬ児の声挙げ泳ぐ
                      河野きよみ
  遠き別れミステリーならむ夜の椅子青梅雨の足しめりてきたり
                       高崎淳子
*人と遠く分れた青梅雨の時期、夜の椅子に座っている時の感触を詠んだと思われる。ただ読者には、何が「ミステリーならむ」なのか、不明。

  走りゐる男の足が菜の花を走らせてゐる向かうの岸に
                      落合けい子
*走っている男の足と静止して咲いている菜の花との相対的な動きの感じを詠んでいる。

  月光の青くにじめる海岸を歩めば足より人魚とならん
                       飛鳥游美
  足の指一本一本に爪のある煩はしさよ切りて飛ばすに
                       竹山 広
*足の指の爪を切っている時の感懐。

  両足の指のあいだを洗わるる五十年後のわれ泡まみれ
                       駒田晶子
*五十歳になって、生れて洗われた時を想っているのだろう。

  駅前のゆうぐれまつり ふくらはぎに小さいひとのぬくもりがある
                       東 直子
*「小さいひと」とは、他人の子供を指しているように思えるがどうか。

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菜の花