身体の部分を詠むー手(2/3)
「手」の字音は、漢音が「シュウ」、呉音が「シュ」で、物を「取・執(しゅ)する」、つまり「とる」意味や、「守」「受」といった意味からきている(「語源由来辞典」)。
鳥籠の水をし更(か)ふとさし入るる手のむくつけく大きかりけり
宇津野研
冬の夜の火のなきままに気がつけば懐手(ふところで)して吾はありたり
松村英一
わが肩に春の世界のもの一つくづれ来(こ)しやと御(み)手を思ひし
与謝野晶子
*愛する鉄幹の手が作者の肩に置かれる状況を想像したのだろう。
ゆくりなく手もておもてを掩(おほ)へればあな煩(わづら)はし我が手なれども
長塚 節
*ゆくりなく: 思いがけず。不意に。
やと握るその手この手のいづれみな大きからぬなき青森人よ
若山牧水
*青森県人たちと若山牧水が握手した時の感想で、みな大きな手をしていたことに驚いたのだ。
はたらけどはたらけど猶(なほ)わが生活(くらし)楽にならざりぢつと手を見る
石川啄木
*啄木の代表歌で、教科書でもおなじみ。。
手の平に文字を書かれて使せし稚き頃に似つる老来ぬ
尾山篤二郎
*稚いころお使いに行く時、親が手の平に買うものを、忘れないようにと文字で書いてくれた。老人になってまた物忘れが始まったのだ。