身体の部分を詠むー指(2/2)
動物の指の数は進化の分岐と共に分かれ、種によって指の本数が異なる。人の指の数は主として5本であり、それ以外は奇形として扱われる。
晴天にもつるるとほきラガー見む翳(かざ)せしゆびの間(あひ)の地獄に
塚本邦雄
*競技にもつれているラグビー選手たちの情景を地獄に見立てたのか? 大げさでは。
わが坐るベッドを撫づる長き指告げ給ふ勿れ過ぎにしことは
相良 宏
*相良宏は、結核にかかり東京郊外での療養生活中に短歌にしたしむが、30歳で逝去。同じ病気を患っていた女性に恋をしていたようだ。
弦と指たたかうごとき終曲はたとうれば今日午後のわが生
岡井 隆
*弦楽器を弾いている指と弦が最終楽章にきて激しくなった。その状況をみて作者の今日の午後の生きざまを思ったのだろう。
いたむ目に冷たき指をあてて思ふいひわけはきかれぬかもしれぬ
石川不二子
わが夏の髪に鋼(はがね)の香が立つと指からめつつ女(ひと)は言うなり
佐佐木幸綱
*女性は作者の髪に指をからめて、その匂いを嗅いだようだ。
冬さればかほそき妻の指さきのすこしあかみていたいたしかも
前田夕暮
物の文頻(あやしじ)にし思(も)へばかいさぐる我が指頭(ゆびさき)に
眼はのるごとし 北原白秋
*文献を指先にさぐりつつ読んでいる情景だろう。