地球を詠む(1/3)
日本語の「地球」という単語は、中国語によるという。中国語の「地球」は明朝の西学東漸期に初めて見られ、イタリア人宣教師マテオ・リッチ(1552年-1610年)の『坤輿万国全図』がこの単語が使用された最初期の資料らしい。日本には、江戸時代にこの漢語が輸入され、1700年代頃の西洋紀聞や和漢三才図会に、使用例がある。幕末から明治期には、庶民も使うほどに定着した(百科事典から)。
今宵見る月のごとくにわが地球月より見なば清(すが)しからむか
窪田空穂
海峡をへだてて住めばおのづから地球のすがたを思ふ日多し
五島美代子
アポロ十一号月面におり立つあかつきを我は地球の花に水やる
太田青丘
*アポロ十一号: 2人の人間を世界で最初に月に着陸させた宇宙船。1969年7月20日のことであった。
母国地球の重力圏を離れたる際(きは)の孤独を偲びてやまず
田谷 鋭
人類が遂げぬべき夢果てあらず人工の星地球をめぐる
岩津資雄
核弾頭五万個秘めて藍色の天空に浮くわれらが地球
加藤克己
病む地球 ささつてにがき裸木々 黄いろい太陽どろんとおちる
加藤克己
地上核地中マグマを抱きつつわが円球は自転つづける
加藤克己
*加藤克己の三首は、地球が人類の科学によって痛めつけられている、と詠む。近年では二酸化炭素排出による地球温暖化で、異常気象が頻繁に発生している。現在まで知る限り最も美しい生命の惑星・地球なのに、その未来は悲惨なものに思える。