地球を詠む(2/3)
今夜(こよい)想う草木虫魚禽獣ら愛(は)しきいのちに地球は満てる
坪野哲久
青葉枯れて薄き酸素に死ぬ予告、ビル累々と地球遺跡の
小瀬洋喜
地球がその影をもて月を蔽へればわがゐる地(つち)は闇濃くなりぬ
上田三四二
*月食(地球が太陽と月の間に入り、地球の影が月にかかることによって月が欠けて見える現象)時における地球上の作者の情景を詠んでいる。
夏の夜の更けて眠らん閻浮提(えんぶだい)地球をみづいろの星とおもひて
上田三四二
*閻浮提: 仏教宇宙観にあらわれる洲(大陸)の名称。須弥山の南方の海上にあるという島の名。島の中央には閻浮樹の森林があり、諸仏が出現する島とされた。もとはインドをさしたが、その他の国をもいい、また人間世界・現世をさすようになった(百科事典)。
空の道ゆきて地球のかげにあふ生くるものなき月しろにして
上田三四二
*飛行機に乗っているときに月食に会ったのだろう。
いのちよりいのち産み継ぎ海原に水惑星の搏動を聴く
栗木京子
きたる世も吹かれておらんコリオリの力にひずむ地球の風に
井辻朱美
*コリオリの力: 回転座標系において運動物体にだけ働く見かけの力。 G.コリオリが 1828年に見出した(百科事典)。
地球さへ永遠ならずと聞く夜半を冬空深く星のまたたく
高尾由己