蕪村俳句と比喩―直喩(3/4)
飛(とび)かはすやたけごころや親雀
*たけごころ: 猛々しくものおじしない心。句は、子雀を懸命に育てて飛び交う親雀の様子を詠んだもの。
我(わが)園(その)の真桑も盗むこころ哉
うつつなきつまみごころの胡蝶哉
襟にふく風あたらしきここちかな
ゆく春やおもたき琵琶の抱(だき)心(ごころ)
桐(きり)火桶無絃(むげん)の琴(きん)の撫(なで)ごころ
*桐火桶の撫で心地に陶淵明の愛した無絃の琴の撫で心地を思う。
たち聞(ぎき)のここちこそすれしかの声
池暮(くれ)て月に棹(さを)さす思(おもひ)あり
鱸(すずき)獲(え)て月宮(げつきゆう)に入(い)るおもひ哉
*鱸を釣り上げた喜びを王者が月宮殿に遊ぶめでたさにたとえた。
我(わが)家に迷ふがごとし春の暮
青梅に打鳴らす歯や貝(バイ)のごと
およぐ時よるべなきさまの蛙かな
思ふ事いわぬさまなる生海鼠哉