天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

蕪村俳句と比喩―直喩(3/4)

     飛(とび)かはすやたけごころや親雀
*たけごころ: 猛々しくものおじしない心。句は、子雀を懸命に育てて飛び交う親雀の様子を詠んだもの。

     我(わが)園(その)の真桑も盗むこころ哉
     うつつなきつまみごころの胡蝶哉
     襟にふく風あたらしきここちかな   
     ゆく春やおもたき琵琶の抱(だき)心(ごころ)    
     桐(きり)火桶無絃(むげん)の琴(きん)の撫(なで)ごころ
*桐火桶の撫で心地に陶淵明の愛した無絃の琴の撫で心地を思う。

     たち聞(ぎき)のここちこそすれしかの声
     池暮(くれ)て月に棹(さを)さす思(おもひ)あり
     鱸(すずき)獲(え)て月宮(げつきゆう)に入(い)るおもひ哉
*鱸を釣り上げた喜びを王者が月宮殿に遊ぶめでたさにたとえた。

     我(わが)家に迷ふがごとし春の暮      
     青梅に打鳴らす歯や貝(バイ)のごと
     およぐ時よるべなきさまの蛙かな
     思ふ事いわぬさまなる生海鼠哉

f:id:amanokakeru:20200330071509j:plain

海鼠