蕪村俳句と比喩―暗喩(隠喩)(3/5)
ほのぼのと粥(かゆ)にあけゆく矢数かな
*通し矢が果てる頃に夜が明ける。粥の湯気の白さにほのぼのをかけた。空腹でもある。
学問は尻からぬけるほたる哉
摑(つか)みとりて心の闇のほたる哉
*螢をつかみとったことで殺生という心の闇を見たのだ。
淀舟の棹(さを)の雫(しづく)もほたるかな
髻(もとどり)を捨(すつ)るや苗の植(うゑ)あまり
夏(げ)百日(ひやくにち)墨もゆがまぬ心かな
*百日間夏書のために墨をすっているが、墨はゆがんでこない。これこそ直き心の現れ。
我(わが)庵(いほ)に火箸(ひばし)を角(つの)や蝸牛
音を啼くや我も藻に住む蟵(かや)のうち
*藻に住む虫のように私も蚊帳のうちで、同行できなかった恨みに泣いている。(句会に参加できなかった、という前書あり。)
沢潟は水のうらかく矢尻(やじり)哉
銭亀(ぜにがめ)や青砥(あをと)もしらぬ山清水