蕪村俳句と比喩―寓喩(諷喩)(2/5)
松下(しようか)童子に問へば只此雲裡(このうんり)山桜
*松の下で童子に隠者の所在を問うと、「処を知らず、只此雲裡山桜あるのみ」と答えた。「唐詩選・巻6・尋隠者不遇」の漢詩をもじった句。
百(もも)とせの枝にもどるや花の主(ぬし)
*松永貞徳を花咲翁と呼ぶことから、百回忌追善として手向けた句。
花盛六波羅禿(かむろ)見ぬ日なき
かくれ住(すみ)て花に真田(さなだ)が謡かな
犬ざくらよし野内裏(だいり)の似せ勅使(ちよくし)
*犬桜は、正当でない南朝の内裏が送った勅使のようなもので、桜に似て桜にあらず、と詠んだ。
阿古久曾(あこくそ)のさしぬきふるふ落花哉
*阿古久曾: 紀貫之の幼名。 さしぬき: 袴の一種。
祇(ぎ)や鑑(かん)や髭(ひげ)に落花を捻(ひね)りけり
*宗祇や宗鑑ぶった連衆が、花の下で句を案じている様子。
千金の宵を綴りて襲(うはがさね)
*蘇東坡の「春宵一刻値千金」を踏んで、春の宵の「龍衣(天子の衣)」に思いをはせる。(前書が省略されているので難解。)
春の夜の盧生(ろせい)が裾(すそ)に羽織かな
岩に腰吾(われ)頼光(らいくわう)のつつじ哉
*岩に腰をおろして辺りのつつじを眺めると、源頼光になったような気分になる。つつじが退治した鬼の血潮にみえたのだ。