天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

父を詠む(2/10)

  吏となるなゆめとぞ父は戒めきはかなき吏にて父はありしなり
                      植松寿樹
*「吏となるなゆめ」とは、「決して役人(官吏)にはなるな。」という意味。

  野の鳥よ古(ふ)りし廂(ひさし)にうたひては父笑(ゑ)ましぬる朝もあるべし
                      窪田空穂
  情熱を超えたる真の大愛はその子を思ふ父のみのもの
                      窪田空穂
  へだたりのいくばくなるを知らねども父おもふときさびしうなりぬ
                      前田夕暮
  わがそばにこころぬけたるすがたしてとすれば父の来て居(を)ること多し
                      若山牧水
  父のごと秋はいかめし母のごと秋はなつかし家持たぬ児に
                      石川啄木
  この母あり父ありて吾(われ)ぞありたし亢(たか)ぶり思ふべきことにもあらじ
                      土屋文明
  医となるもながくはさせじ医は永く生きぬをみよと云ひし父はも
                      豊島逃水
  妻は母に母は父に言ふわが病襖へだててその声をきく      
                      明石海人
*明石海人は、26歳の時にハンセン病を発症した。

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野の鳥