天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

母を詠む(12/12)

  金木犀香り漂う前庭に窓開けはなち母を逝かしむ
                      田島定爾
  戦死せし父の墓へと母葬り長き歳月埋めまゐらせむ
                    小久保みよ子
  七夕に母よデートをしませんか二歳で別れたかなしみ聴きます
                     布施隆三郎
  梅の咲く湖畔に母をいざなひぬわれはこの背に負はれたりしか
                      上田善朗
  つかまりて大地に立たむをさなごのさまにつかまり母坐りゆく
                      中野昭子
  施設へと戻りし日のまま日めくりは年を越したり母の小部屋は
                      林本政夫
  意地悪もいひつつ洗ひやりし日の母の頭を指は記憶す
                      下田秀枝

[注]「母を詠む」シリーズの作品群は、涙なくしては読めないものであった。余分な注釈は不要であったろう。

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金木犀