子を詠む(1/6)
子・児・娘いずれも「こ」と読む。「愛子(まなご)」は最愛の子。「若子(わくご)」は幼い子にも若い男子にも使う。「吾子(あこ)」は上代ではアゴと濁った。(辞典による)
銀(しろがね)も金(くがね)も玉も何せむに勝(まさ)れる宝子に及(し)かめやも
万葉集・山上憶良
よしゑやし直(ただ)ならずともぬえ鳥のうら嘆(な)け居(を)りと告げむ子もがも
万葉集・柿本人麿歌集
*「たとえ直に逢えなくても、ぬえ鳥のようにひっそりと嘆いているとあの人に伝えてくれる子がいたらなあ。」 ぬえ鳥はトラツグミのこと。
朝影にわが身はなりぬ玉かぎるほのかに見えて去(い)にし子ゆゑに
万葉集・柿本人麿歌集
*玉かぎる: 日、夕、ほのか、などにかかる枕詞。
「朝の日差しの中の影のように私はすっかりやせ細ってしまった。チラッとその姿を見せてどこかに行ってしまったあの子のせいで。」
あしひきの山田作る子秀(ひ)でずとも縄(しめ)だに延(は)へよ守(も)ると知るがね
万葉集・作者未詳
*「山田を耕している娘さんよ、穂はまだ出てきてないけれど、ちゃんと縄を張りめぐらせておきなさいよ。ここはあなたの田だと知らせるために。」
言(こと)問(と)はぬ木すら妹(いも)と兄(せ)とありとふをただ独子(ひとりご)にあるが苦しさ
万葉集・市原王
多摩川に曝(さら)す手作(てづくり)さらさらに何そこの児のここだ愛(かな)しき
万葉集・東歌
*さらさらに: 副詞。「さらに ますます」 ここだ: 副詞。「こんなにも はなはだしく」
筑紫なるにほふ児ゆゑに陸奥(みちのく)の可刀(かと)利(り)少女(をとめ)の結(ゆ)ひし紐解く
万葉集・東歌
*「筑紫の国の匂うばかり美しい女にひかれて、陸奥の可刀利娘子が結んでくれた紐を解くことよ。」
[注意]このシリーズでも添付する参考画像は、いちいち断らないがWEBから借用してトリミングしている。