子を詠む(4/6)
風化して傾きゐずや年を経しかの草かげの吾児の墓標よ
大西民子
*作者は、23歳で結婚、男児を早死産し半年あまり病床にあった。
入浴を終えたる吾子が真裸にまろび逃げゆく春の夜具のうえ
橋本喜典
山坂を歌ひてくだる一群のなかにちひさくわが子が交(まじ)る
上田三四二
一団の小学生に交じる吾子自作の鯉のぼりかかげて帰る
藤岡武雄
歩道にて会ひたる父に口きかず娘十四歳謎のかたまり
島田修二
誕生日を迎へたる吾子を囲む夜に妻はいくらか酔ひたるらしも
戸塚 博
けしごむを購ひやりしのみデパートにつづく地下駅に子と憩ひをり
田谷 鋭
汗のシャツ枝に吊してかへりきしわれにふたりの子がぶらさがる
時田則雄
小突かれて精一杯に耐へてゐるブランコの吾子を遠く見守りつ
河野裕子
吾子泣きて我呼びおらん夕くれてまた痛みくる乳首もみほぐす
玉城洋子