酒飲めば酔ひてたのしくなる友にひとり飲ましめ我は飯食ふ
窪田空穂
凩(こがらし)を聴きておもふはすでに亡き友啄木がありし日のこと
吉井 勇
よき友にたより吾がせむこの庭の野菊の花ははや咲きにけり
古泉千樫
友がみなわれよりえらく見ゆる日よ花を買ひ来て妻としたしむ
石川啄木
老い友の 死にのいまはをまもりたる まごころびとを 忘れざるべし
釈 迢空
明日香川(あすかがは)ありて激(たぎ)てどむかし来てなげきし友のうつつにはなし
中村憲吉
あかつきをひさしく覚めて涙うかぶ友の誰よりもわれは幸あり
柴正田稔
この友ありて今の我ありと言ひ出でて和む心は今のわが幸
柴正田稔