友を詠む(4/7)
貧生涯ただいちにんの侶たりき吾妻のいのち死なしめざらむ
坪野哲久
*吾妻とは6歳上の歌人・山田あきのこと。
戦争に君を死なしめざらむとす友の多くが今夜(こよひ)つどふも
高田浪吉
歯ぎしりの時期を糧ともなしながら得し友遂に去りゆきし友
水野昌雄
心弱り帰り来しかば東京の吾がよき友に一人一人逢ふ
小暮政次
ナホトカ港視界に消えて立ち古りし友の墓標が波間に残る
森川平八
*ナホトカ: ロシア連邦の極東部、沿海地方に属している商港都市。日本海の北西部にあるナホトカ湾に面し、日本との関係が深い。
シューバーの釦をはめる友の手に吹雪はすさぶチタの夕ぐれ
森川平八
*シューバー: メーカー名。 チタ: ロシア連邦、東シベリア南部の都市。
秋に入りて訪ひ来ぬ友も卒論を書きつつ職を探してぞゐむ
篠 弘