天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

友を詠む(6/7)

  信頼を温めながら酌む友の寡黙をほぐす酒をまた注ぐ
                      吉田秋陽
  死顔を見られたくないと言ひし友それよりはやく過ぎし幾とせ
                      清水房雄
  この友とも老を嘆きあふいとま無く歌会果つれば相別れゆく
                      清水房雄
  かむりきの峠の駅はわが友が駅長にて萩の花植ゑし駅
                      斎藤 史
*かむりきの峠: 長野県千曲市東筑摩郡筑北村にまたがる冠着山(かむりきやま)の峠。

  友等の刑死われの老死の間(あひ)埋めてあはれ幾春の花散りにけり
                      斎藤 史
*友等の刑死とは、1936年の二・二六事件のこと。作者が亡くなったのは2002年5月。つまり66年ほどの歳月が流れた。

  痩せし樹に背広をかけて向きあひぬ死後も親しき友ひとりあり
                      伊藤一彦

f:id:amanokakeru:20200605064745j:plain

冠着山(かむりきやま)