信頼を温めながら酌む友の寡黙をほぐす酒をまた注ぐ
吉田秋陽
死顔を見られたくないと言ひし友それよりはやく過ぎし幾とせ
清水房雄
この友とも老を嘆きあふいとま無く歌会果つれば相別れゆく
清水房雄
かむりきの峠の駅はわが友が駅長にて萩の花植ゑし駅
斎藤 史
*かむりきの峠: 長野県千曲市と東筑摩郡筑北村にまたがる冠着山(かむりきやま)の峠。
友等の刑死われの老死の間(あひ)埋めてあはれ幾春の花散りにけり
斎藤 史
*友等の刑死とは、1936年の二・二六事件のこと。作者が亡くなったのは2002年5月。つまり66年ほどの歳月が流れた。
痩せし樹に背広をかけて向きあひぬ死後も親しき友ひとりあり
伊藤一彦