天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

卯の花(1/4)

 卯の花については、2007年5月30日、2011年5月26日、2012年5月17日 のブログでも取り上げているので、それらとは重複しない作品をあげた。
 卯の花は、幹が中空なのでウツギとも呼ぶ。初夏に白い五弁の花が穂をなして咲く。箱根うつぎの花は、白、紅、紫 と多彩。古典和歌では、垣根、ほととぎす、月 などととり合わせるのが常道。

  佐伯山(さへきやま)卯の花持てる愛(かな)しきが手をし取りてば花は散るとも
                   万葉集・作者未詳
*「佐伯山で卯の花を持っている愛しい人の手をとることができたら、花は散ってもかまわない。」

  霍公鳥(ほととぎす)来鳴き響(とよ)もす卯の花の共にや来しと問はましものを
                   万葉集・石上堅魚
*「霍公鳥がやって来ては鳴き声を響かせている。卯の花の咲くのとともにやって来たのかと問いたいものだ。」

  五月山(さつきやま)卯の花月夜霍公鳥(ほととぎす)聞けども飽かずまた鳴かぬかも
                   万葉集・作者未詳
*「五月の山の景色はよいものだ。卯の花が咲いている月の晩に、ホトトギスが鳴くのをいくら聞いても飽くことがない。さらに鳴いてくれたらよいのに。」

  世の中をいとふ山辺の草木とやあなうの花の色に出でにけむ
                  古今集・読人しらず
*「この身は世の中を嫌に思う山辺の草木なのか、「あな憂」と卯の花が咲くように顔色に出てしまったようだ。」

  恨めしき君が垣根のうの花はうしと見つつもなほたのむかな
                  後撰集・読人しらず
  時わかずふれる雪かと見るまでに垣根もたわにさけるうの花
                  後撰集・読人しらず
*たわに: 「たわわに」と同じ意味。(たわなり、たわわなり いずれも形容動詞)

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ほととぎす