卯の花(2/4)
わがやどのかきねや春を隔つらむ夏来にけりと見ゆる卯の花
拾遺集・源 順
*「我が家の庭の垣根は今ちょうど春を分け隔てているのだろう。夏が来たよと生垣の卯の花が教えてくれているように見える。」
山がつのかきねに咲ける卯の花はたがしろたへの衣かけしぞ
拾遺集・読人しらず
*山がつ(山賤): 山仕事を生業とする身分の低い人。きこりや杣人(そまびと)などを指した。
卯の花の咲ける垣根はしら浪のたつたの川のゐぜきとぞ見る
後拾遺集・伊勢大輔
*ゐぜき: 井関。水を他に引くために、土や木などで川水をせきとめた所。
月影を色にて咲ける卯の花はあけばありあけの心地こそせめ
後拾遺集・読人しらず
*「月の白さをその色として咲いている卯の花は、夜が明けると有明の月の光がさしているような心地がすることだろう。」
いづれをかわきて折らまし山里のかき根つづきに咲ける卯の花
金葉集・大江匡房
雪の色をうばひて咲けるうの花に小野のさと人冬ごもりすな
金葉集・藤原公実
[参考] 『夏は来ぬ』
佐佐木信綱作詞、小山作之助作曲の日本の唱歌。1896年5月、『新編教育唱歌集
(第五集)』で発表された。次の一番の歌詞はよく知られている。
卯の花の 匂う垣根に
時鳥(ほととぎす) 早も来鳴きて
忍音(しのびね)もらす 夏は来ぬ