天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

衣のうたー和服(1/3)

 和服という言葉は、明治時代に西洋の衣服である洋服に対するものとして、従来の日本の衣服を表す語として生まれた。それ以前は昔から着物といった。

  和服きて今日うつくしとわれ思ふバスより降りて歩み来れり
                       柴生田稔
*和服の女性と待ち合わせていたのだ。

  ハンガーに掛け置くゆかたわれよりも肩いからしてゐて夜の壁
                       吉野昌夫

  南風夕べぬるしと霜月の羽織ぬぎ居て風邪心地せり
                       杉浦翠子
  疾風に逆ひとべる声の下軽羅を干して軽羅の少女
                       相良 宏
*軽羅: 紗 (しゃ) ・絽 (ろ) などの薄い絹織物。また、それで作った単 (ひとえ) 。上句は、疾風の中で軽羅を干している少女が、「飛ばされちゃう!」とか叫んでいる情景を詠んでいるのだろう。

  暗きかな 塀をまはれば日溜りにをんなの晴着ほされゐるなり
                       水城春房
  眦(まなじり)を決すべかりし時も過ぎわが肩の辺の山繭の衣(きぬ)
                       安永蕗子
*山繭からは「天蚕糸」と呼ばれる良質の絹糸がとれる。これで織られたものを着ていたのは、眦(まなじり)を決するような時期だったのだが、今はその年を過ぎてしまった、と懐かしんでいるようだ。

  常ならぬ我が行ひの鮮(あたら)しく月に干しゆく薄き単衣を
                       安永蕗子

 

[注意]このシリーズでも、各種事典・辞典などを参考にしています。また関連画像をWEBから借用、編集しています。

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羽織