衣のうたー袖・袂・襟(3/11)
おろかなる涙ぞ袖に玉はなす我はせきあへずたきつ瀬なれば
古今集・小野小町
*「玉になるぐらいの涙なら大した事はありません。私の方は堰き止められないほどの激流になっていますよ。」
わが袖にまだきしぐれのふりぬるは君がこころにあきやきぬらむ
古今集・読人しらず
*まだき : 早くも。「 私の袖に早くも時雨が降ったのは、あなたの心に 飽きがきたからでしょうか。」
かげろふのそれかあらぬか春雨のふるひとなれば袖ぞぬれぬる
古今集・読人しらず
*「 あなたの姿は陽炎なのかどうなのか。忘れられた私の袖が春雨のように濡れています。」
色よりも香こそあはれと思ほゆれたが袖ふれし宿の梅ぞも
古今集・読人しらず
*「梅はその色彩よりも香りの方がしみじみと趣深く思われる。宿の梅に誰かの袖がふれて、その移り香が香っているのだろうか。」
折りつれば袖こそ匂へ梅の花ありとやここに鶯の鳴く
古今集・読人しらず
*「梅の花を折ったので私の袖は移り香がしている。梅の花があると思って、ここにウグイスが来て鳴くのかな。」
つつめども袖にたまらぬしら玉は人をみぬめの涙なりけり
古今集・安倍清行
*「包もうとしても、袖に溜めることができずにこぼれてしまう白玉は、あなたに会えなくて悲しんで流す涙なのでした。」
あかざりし袖の中にや入りにけむ我がたましひのなき心地する
古今集・陸奥
*詞書に「女友だちとものがたりして別れてのちにつかはしける」とある。よって一首の意味は、「まだ話足りずに別れたので、私の魂は袖の中に入ってしまったのでしょうか、あなたと別れた今では、まるで魂が抜けたかのような気がします。」
