衣のうたー袖・袂・襟(6/11)
立田山秋行く人の袖を見よ木木のこずゑはしぐれざりけり
新古今集・慈円
わきてなど庵もるそでのしをるらむ稲葉にかぎる秋の風かは
新古今集・慈円
*「とりわけどうして田の庵を守る私の袖だけがぐっしょりとなるのだろう。稲葉に限って吹く秋風ではないであろうに。」 [参照]www.karuta.ca/koten/koten-kan5.html
やよ時雨もの思ふ袖のなかりせば木の葉の後になにを染めまし
新古今集・慈円
*「さて時雨、もの思う涙の袖がなかったならば、木の葉の後に何を冬色に染めるのだろう。」
駒とめて袖うちはらふかげもなし佐野のわたりの雪の夕暮
新古今集・藤原定家
*教科書に載っている超有名歌。
そでの上にたれゆゑ月は宿るぞとよそになしても人のとへかし
新古今集・藤原秀能
*「私の袖の上に、月の光が宿っている。それは誰のために流した涙なのかと、他人事のようなふりをしてでも、あの人が聞いてほしい。」
涙川たぎつこころの早き瀬をしがらみかけてせく袖ぞなき
新古今集・二条院讃岐
*「涙は川のように止めどなく溢れ、恋に激しく沸き返る激流のよう。柵を設けて塞き止めようにも、そんな袖があるわけはない。」
逢ふことをけふまつが枝の手向草いく夜しをるる袖とかは知る
新古今集・式子内親王
*「逢えるその日を待っていた私の袖は、松の枝に付けられて年月を経た幣のように、幾夜涙で萎れているか分かりますか分からないでしょ。」
身を知れば人のとがとも思はぬに恨み顔にも濡るる袖かな
新古今集・西行
*「己の身の程を知っているから、あのお方のせいとは思わないけれど、それでもなお恨みがましく涙で袖が濡れてくるのをどうすることもできない。」