天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

衣のうたー履物(2/4)

  わらぢ作る手はじめに習ひし足中草履(ぞうり)はきたる武士の絵馬は忘れず

                     土屋文明

*足中(足半)草履: 普通の長さの半分しかなく、踵が出てしまう草履の総称。長草履と区別している。鎌倉時代から戦後ぐらいまで、ざっと7~800年ぐらいは履き続けられたという。

 

  足曳(あしびき)の山の白雲草鞋(わらdi)はきて一人い行きし人は帰らず

                     島木赤彦

  かがまりて草鞋を結ぶ朝立の草戸は濡れて霧しづくすも

                     平福百穂

  寒けくも降り来る雪か草鞋つくるうつそみの摩(ま)羅(ら)冷えにけるかも

                    結城哀草果

*うつそみ: この世(の人)。

 

  草鞋買ひてはきかへをれば海なりの音ははるかに地をつたひくる

                     松田常憲

  草鞋穿(は)きて言葉通ぜぬ一隊が今朝南方に移動せりとふ

                     渡辺直己

*日本軍の移動の様子を詠んだ。上句の描写がなんとも不気味であり、あわれでもある。

 

「参考」松尾芭蕉の句

     あやめ草(ぐさ)足に結(むすば)ん草鞋の緒(を)

*「端午の節句なので、家々の軒端にあやめ草(菖蒲)が葺いてある。旅中にある私は、草鞋の緒に菖蒲草を結んで、旅の無事を祈ろう。」

 

「参考」与謝蕪村の句

     初雪や草の戸を訪ふわら草履

 

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草鞋