衣のうたーコート(2/2)
皺くちゃのレイン・コートの襟正し、卒業生を見送っている
天涯はみどりの孤独ここはどこ レインコートのえりたてるかな
村木道彦
川にそそぐ雨白々とさびしきにレインコートの裾濡れて行く
近藤芳美
バーバリを吹かれ帰らん人絶てる今日すずかけの冬となる街
近藤芳美
*バーバリ: バーバリ社が製造したトレンチコート(冬季用の外套およびレインコートの一種)。
肩の高さひどく違へてつるされたトレンチコートの抱いてゐる熱
亡き父のマントの裾にかくまはれ歩みきいつの雪の夜ならむ
大西民子
黒マントの裾ひるがへしゆく女跳ぶか飛ぶかとただ従(つ)きてゆく
富小路禎子
オーバーにつきし枯草うす白く見て立つ時は早や嘆きをり
河野愛子
灰色の中折黒インバネス 心蕩ける思い出あらず
*インバネス: インバネスコートの略。男性用の外套の一種で、丈が長いコートに、ケープを合わせたデザインを持つ。
朝々をダウンコートの裂れ目より子は白き羽根落としては出づ
森岡千賀子