天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

衣のうたーコート(2/2)

  皺くちゃのレイン・コートの襟正し、卒業生を見送っている

                        福島泰樹

  天涯はみどりの孤独ここはどこ レインコートのえりたてるかな

                        村木道彦

  川にそそぐ雨白々とさびしきにレインコートの裾濡れて行く

                        近藤芳美

  バーバリを吹かれ帰らん人絶てる今日すずかけの冬となる街

                        近藤芳美

*バーバリ: バーバリ社が製造したトレンチコート(冬季用の外套およびレインコートの一種)。

 

  肩の高さひどく違へてつるされたトレンチコートの抱いてゐる熱

                        井辻朱美

  亡き父のマントの裾にかくまはれ歩みきいつの雪の夜ならむ

                        大西民子

  黒マントの裾ひるがへしゆく女跳ぶか飛ぶかとただ従(つ)きてゆく

                       富小路禎子

  オーバーにつきし枯草うす白く見て立つ時は早や嘆きをり

                        河野愛子

  灰色の中折黒インバネス 心蕩ける思い出あらず

                        福島泰樹

インバネス: インバネスコートの略。男性用の外套の一種で、丈が長いコートに、ケープを合わせたデザインを持つ。

 

  朝々をダウンコートの裂れ目より子は白き羽根落としては出づ

                       森岡千賀子

f:id:amanokakeru:20200715070855j:plain

レインコート (webから)