天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

食のうたー米、飯、ごはん(4/6)

  食初めの飯一粒をみどり児はいぶかしみつつ舌もて押し出す

                        植松壽樹

  さやぎ合ひ飯食ふことも幾年かすぎて思へば朝寒(あさざむ)の中

                        岡井 隆

*楽しく食事していた時期があったのだ。幾年かたってそれがなくなってしまった。家庭崩壊が起きたのだろう。

 

  おのれ炊き飯(いい)を食みおり飯の白遠くなりつつ雪のふるおと

                        香川 進

  冷飯に汁かけて食ふ妻のしぐさ不きげんの時と吾は知りをり

                        五味保儀

*奥さんが冷飯に汁かけて食いだすと、確かに不機嫌なことが一目瞭然であろう。

 

  人と人和してゐるころ木のにほひ火のにほひする飯(いひ)食みてゐき

                        伊藤一彦

  飯をくう顔がさみしい男でも笑う位はたのしく出来る

                        高瀬一誌

  何かして居らねばならぬ気持にて飯炊き飯はくろく焦げたり

                        小暮正次

*何かしなくては思って飯を炊いたら黒焦げの飯になった、という。家庭生活の分担が思いやられる。

 

  「めし」と大きく書く食堂の暖簾(のれん)あり浪花の覇気は江戸にまされり

                        岩田 正

*食べることに関しては江戸は浪花に負けるのだ。大阪の食い倒れ、というくらいなのだ。

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暖簾 (webから)