食のうたー米、飯、ごはん(5/6)
闇なかに面寄せて食ふ白飯は飴のごとくに咽喉くだりゆく
大内與五郎
*シベリア抑留中の経験であろう。
白飯のひしめく湯気を手もてあふぐ 人はほろびに至るにも
森岡貞香
*葬式の食事に出された白飯を食べる場面であろう。
あたたかく真白き飯(いい)よ神のごとわがうつしみの前にかがやく
川端 弘
駆落ちの二人の如く白飯をせせり食ひたり武州小川宿
上條雅通
かなしみに手は従はず甲斐甲斐しく夕べ白飯(しろいひ)に酢をうちてゐつ
肝を病む夫が好みに単純化さるる夕餉のぬくき白飯(しらいひ)
筒井早苗
*肝臓を病むとおかずの選択に困ってしまう。温かい白飯だけは、安心して食べられるのだ。
白飯に恋しき人がゐたりけりふうふうと吹く恋しき人を
池田はるみ
*白飯を恋人のように好む人がいたのだろう。
白飯(しらいひ)をよそはむとして声をあぐ雪の朝(あした)の陶(すゑ)のつめたさ
平田利栄