天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

食のうたー魚介(2/7)

 日本の鰯には、マイワシ、ウルメイワシ、カタクチイワシの3種がある。名前の由来には、陸に揚げるとすぐに弱って腐りやすい魚なので「よわし」から変化したとの説がある。

 鯖はマグロやアジ等と並んで世界的に消費量の多い魚とされる。日本の太平洋側の各地で水揚げされるサバは秋が旬で、「秋サバ」と称される。ただ九州沿岸で水揚げされるサバは、冬が旬であり俗に「寒サバ」とも言う。

 

  幼子と妻とむつみつつ鰯焼く火に照られゐて夕寒きかな

                     木俣 修

  日は暮れぬ鰯なほ干す旃陀羅(せんだら)が暗き垣根の白菊の花

                     北原白秋

*旃陀羅とは、一時期、被差別民にたいする呼称として使われていた言葉。白秋がこの言葉を短歌に使うとは、驚き。

 

  赤インク一日吾はつかひ居り鰯買ひくれば鰯焼かせて

                     小暮正次

*鰯を買ってきたのは、奥さんであろう。

 

  舌を刺す鰯を分けて喰ふ夕餉妻にたぬしき事もなからむ

                     近藤芳美

*舌を刺す鰯を分けて妻とともに夕食に食べたのだろう。こんな食事では、奥さんも楽しくないであろう。

 

  煮て焼きてフライつみれと日日続く鰯を夫の飽くことはなき

                     石田照子

*つみれ: 魚のすり身に卵や小麦粉を入れて味を調え、小さく丸めてゆでたもの。

 

  割(さき)鯖(さば)を田に干し並(な)めし浅峡(あさかひ)に海のなぎさの近き白波

                    佐藤佐太郎

  春はなほ風の寒きに干しあげてこの割(さき)鯖(さば)の青のすがしさ

                     岡部文夫

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