天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

食のうたー鮨(2/3)

     鮒(ふな)ずしや彦根の城に雲かかる

*鮒ずし: 日本古来のなれずしの一種。古代から琵琶湖産のニゴロブナなどを主要食材として作られ続けている滋賀県の郷土料理。独特の発酵臭がある。

 

     鮓おしてしばし淋しきこころかな

*鮓を漬けて重しをして作業が終わったあとの気持。

 

     鮓を圧(お)す我レ酒醸(かも)す隣あり

*夏に鮓を漬ける自分と冬に酒造りをする隣人と、いずれもつらい仕事だ、という。

 

     鮓をおす石上(せきじやう)に詩を題すべく

*「石上(せきじやう)に詩を題す」は有名な白楽天の詩からとった。鮓の重しの石は、漢詩を書くのにちょうどいい、と洒落てみた。

 

     すし桶を洗へば浅き游(いう)漁(ぎょ)かな

*游漁: 「游漁出聴」といった荀子の詩(琴の音にひかれて魚が浮かび上がる)を踏まえているらしい。この句では、飯粒目当てに魚が浮いてくる、とした。

 

     真しらげのよね一升や鮓のめし

*真しらげのよね: 精白米。

 

     卓上の鮓に目寒し観魚亭

*卓上に供せられた涼しげな鮓の感じを「目寒し」(目に寒く感じる)と、大げさに表現。

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彦根の城 (WEBから)