天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

食のうたー鮨(3/3)

     鮓の石に五(ご)更(から)の鐘のひびきかな

*夜の時間を初更から五更に区分する制度において、五更は御前四時頃に当る。

 

     寂寞(じやくまく)と昼間を鮓のなれ加減

 

     蓼(たで)の葉を此(この)君と申せ雀ずし

*王子猷の詩を踏んでいるらしい。雀鮓にとって蓼の葉は、「此君」ともいうべきなくてはならぬもの。

 雀ずし: イナ、小ダイ、フナなどをすずめ開きにし、その中に鮨飯を詰めた鮨。その形が雀に似ているところからいう。江戸時代、大坂の名物とされた。(辞典による)

 

     夢さめてあはやとひらく一夜ずし

*馴れ時を逸したか、と慌てて鮓を開く。

 

     鮓のいを卯の花衣着たりけり

卯の花衣: 「うらおもてしろし。或は面白くうら青もあり」という詩文あり。

鮓の魚に塩をまぶした白と地の青とを併せて卯の花衣にみたてた。

 

     鮓の石かろき袂の力ラかな

*重い鮓石を軽々と持ち上げるのは、女性刀自の袂の力である。

 

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蓼の葉 (WEBから)