天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

食のうたー野菜(1/3)

 このシリーズでは野菜、果物、魚介は食べるときの状況を詠んだ歌に限る。

 芋(いも、うも)の種類は多い。里芋、馬鈴薯あるいはじゃがいも、山藷あるいは自然薯あるいはとろろ芋、甘藷あるいはサツマイモ 等々。

 葱はユリ科多年草で、中央アジア原産。「ねぎ坊主」は先端につける白い小花をさす。

 

  朝に食べゆふべに食べて我が畑に生(な)りしことしの甘藷の美(うま)さは

                      峯村国一

  この糧(かて)を得ねば飢ゑ死ぬ人の背に藷(いも)は石より重たかりけり

                      福田栄一

  里芋の汁あつくして父と吸ふ夜目にふるるもの皆秋となる

                     馬場あき子

  円いくつ閉づれば永遠(とは)の見ゆるかなとろろ藷摩る擂鉢の庭

                     春日真木子

*擂鉢に自然薯を刻んでいれてすりこ木でつぶし、円を描いて擦っていけば、とろろ芋になる。

 

  とろろ飯すすりて食める鹿深道大夕立の通りすぎゆく

                      岡本智子

*鹿深道(かふかのみち)は滋賀県甲賀市にある。ここは伊賀と近江をつなぐ交通の要所であった。壬申の乱の舞台になったところという。

 

  今日の日はおほよそよろしよろしさをふくらませつつとろろ芋摺る

                     小島ゆかり

  ほしいままにひとりの夜(よ)深(は)となりゆきて葱刻みをり後に一仕事

                      坪野哲久

*夜更けにひとり葱を刻んでうどんでも食べるのであろうか。その後で一仕事するのだ。

 

  アプリケをつけしカーテンねぎ焼きてくらう家族の世すぎを隔つ

                      川口常孝

*アプリケ(アップリケ)は、土台となる布の上に、別の布や皮などの小片を縫い留めたり貼り付けた手芸作品のこと。そのカーテンが、ねぎ焼きてくらう家族の生活を外から見えないようにしている。

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自然薯

 

[追伸]今日は七十五年目の広島原爆忌

  コロナ禍に帰省あきらめ広島の被爆ピアノの曲に手合はす