天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

食のうたー果物(4/7)

 蜜柑は、ミカン科の常緑有刺低木またはその果実の総称で、ウンシュウミカン、キシュウミカンなど多くの品種がある。中国から伝わったものが、和歌山や静岡に移植され、種類も増えた。

 無花果(いちじく)は、クワ科イチジク属の落葉高木またその果実。アラビア南部が原産地、日本には江戸時代初期、ペルシャから中国を経て、長崎に伝来したという。

 

  たそがれの、蜜柑をむきし爪さきの

  黄なるかをりに、

  母をおもへり。           土岐善麿

 

  我友は蜜柑むきつつしみじみとはや抱(いだ)きねといひにけらずや

                    斎藤茂吉

  ぢつとして、蜜柑のつゆに染まりたる爪を見つむる心もとなさ!

                    石川啄木

  いきどほろしきこの身もつひに黙しつつ入日のなかに無花果を食(は)む

                    斎藤茂吉

  生きてゐてああよかったと朝露にしっとり濡れし無花果を食む

                    香川 進

  トルコ産白いちじくのなめらかさ舌にのこして別れの時間

                   河野小百合

*トルコ産白いちじくを一緒に食べた人の素性を知りたくなる。

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無花果