天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

食のうたー水、お茶、コーヒー(5/6)

 コーヒー(珈琲)は有史以前から利用されていたらしいが、現在見られる「焙煎した豆から抽出したコーヒー」が登場したのは13世紀以降らしい。

 

  掌(て)のうちに包みて啜るコーヒーの朝さしあたり迫る声なく

                       岡井 隆

  君去りしけざむい朝(あした) 挽く豆のキリマンジェロに死すべくもなく

                       福島泰樹

  カフェ・オ・レを飲む縮れ毛のせいねんの漏らすひとこと「農はあこがれ」

                       時田則雄

*カフェ・オ・レ: 濃く淹れたコーヒーと熱い牛乳同量を、カップに同時に注いだもの。

 

  未来とはまづ明日のこと珈琲を冥府のごとき胃に堕しつつ

                       松平盟子

*冥府: 死後の世界。冥土。特に、地獄。

 

  熱きコーヒーが胃に届きゆく君の死の真実を認識させゆくやうに

                      萩本阿以子

  紙コップの熱きコーヒーを飲みながら浴びたる言葉の棘抜きてゐる

                       大平修身

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紙コップ