住のうたー家・庵・宿(1/14)
家とは、人が住むための建物のこと。旧かなは「いへ」で語源には諸説ある。寝戸(いへ)で、「い」が寝る、「へ」が戸に通ずるなど。家居は、家をつくって住むこと。また住居をさす。
庵、廬(いおり、いお)は、草や木でつくった仮小屋。
宿(あるいは屋戸)は、住むところや家の戸口をさす。古典和歌の典型的なうた言葉で、大変多く使われた。(以上、百科事典から)
山越(こ)しの風を時じみ寝(ぬ)る夜おちず家なる妹を懸けて偲(しの)ひつ
万葉集・軍王
*時じみ: 常にある。おちず: 欠かさず。
「山を越えて吹きつける風は止むことを知らず、夜毎に家に居る妻を思い出してしまう。」
大伴の高師(たかし)の浜の松が根を枕(まくら)き寝(ぬ)れど家し偲はゆ
万葉集・置始東人
*大伴の高師の浜: 現在の大阪府泉北郡高石町一帯にあった浜。
「大伴の高師の浜の松の根を枕にして寝ていても、家のことが思われることよ。」
大伴の御津(みつ)の浜にある忘れ貝家にある妹を忘れて思へや
万葉集・身人部王
*大伴の御津の浜・・・御津は難波の津をさす。御津は公用船の停泊する港の意。遣唐使の一行はここから出立した。この御津の浜周辺は大伴氏の所領があったことから、その上に「大伴の」と冠するようになったという。
「大伴の御津の浜の忘れ貝よ、家に残してきた妻を忘れることなどないよ。」
妹が家も継ぎて見ましを大和なる大島の嶺(ね)に家もあらましを
*「君のいる家を見続けていたいなあ。大和の大島の山に君の家があればいいのに。」
家にあらば妹が手まかむ草枕旅に臥(こや)せるこの旅人(たびと)あはれ
万葉集・聖徳皇子
*「家にいたなら妻の手を枕にしているだろうに、草を枕の旅に倒れているこの旅人の可哀想なことだ。」
[注]万葉集の各歌の解釈は、WEBに掲載されているいくつかの万葉集の解説サイトによっている。