住のうたー家・庵・宿(3/14)
野辺ちかく家居しをれば鶯のなくなる声はあさなあさな聞く
古今集・読人しらず
*「人里を離れて野辺の近くに住まいを構えていると、鶯の声だけは贅沢なまでに毎朝毎朝聞くことが出来る。」
家ながらわかるる時は山の井のにごりしよりもわびしかりけれ
拾遺集・紀 貫之
*「家にいながら別れるときは、山の井の水が濁った時よりも侘しかったことだ。」
山ざとの家居はかすみこめたれどかきねの柳すゑは外(と)に見ゆ
拾遺集・弓削嘉言
思ふことありあけ方の鹿の音はなほ山深くいへゐせよとや
千載集・藤原良清
神ならば岩おしわけてかへらまし山路の暮は家ぞこひしき
加納諸平
わた中のかかる島にも人すみて家もありけり墓もありけり
人いづら吾がかげ一つのこりをりこの山峡の秋かぜの家
*いづら: どこ(方向・場所についていう不定称の指示代名詞。「ら」は漠然とした場所・方向を表す接尾語。) 「学研全訳古語辞典から。」
山火事の火影(ほかげ)おぼろに宵ふけて家居がなしも妹に恋ひつつ
古泉千樫
夕されば庭に這ひいづる蟇かれも己(し)が家ありて安く籠るを
窪田空穂
金・借地ともに得がたき我なるを家建てんとぞ思ひこみける
窪田空穂